【取材】普通機専門メーカー「愛喜」の工場でアナログ機の魅力を探ってみた

2018/11/30

特集

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    先日のチャレンジャー幸手店での取材で、オーナーのひげ紳士さんが「もし社員教育をする立場なら、愛喜さんの工場見学に絶対連れていく」とおっしゃっていました。愛喜は2014年に設立された普通機専門メーカー。幸チャレにはオリジナル盤面の『CRAコスモパニック10』も設置されていて、決してメジャーとは言えない「普通機」への関心が俄然高まってきたP-Summa編集部。

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    ひげ紳士さんがそこまでおっしゃるなら是非行ってみたい! というわけで愛喜さんに取材を申し込んだところ、快く工場見学とインタビューを許可してくださいました! ありがとうございます‼
    まずは普通機が出来上がるまでの工程を紹介、ということで、工場見学の様子をご覧ください!

    パチンコ台製造工場に潜入!

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    こちらが愛喜さんの工場。東武スカイツリーライン武里駅より車で10分ほどの距離にあります。

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    工場に一歩入ると、目に飛び込んでくるのは段ボールの山! このほとんどがパチンコ台の部材や部品なんだそうです。ふだん何気なく打っているパチンコですが、改めて考えてみると、大量のパーツから出来ていますよね。チューリップ一つをとっても、さらに細かい複数のパーツで構成されていて、ここでは一つ一つ手作業で組み立てるとのこと。想像以上に大変な作業という気がしてきました……!

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    パチンコ台の盤面は、最近はアクリル製が主流だそうですが、愛喜さんではベニヤ板を貼り合わせたものを使っているそうです。まず、釘を打つ位置に「下穴」を開けていきます。

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    トゲトゲのついた鉄板を使ったこちらの機械「ゲージプレス機」なら、一撃ですべての穴を開けられる(!)とのことです。破壊力バツグンですね! 続いて、下穴を開けたところに釘を打っていきます。

    釘打ちも機械が自動で打ち込んでくれます。打った後に素早く回転して次の釘をスタンバイするところが射撃の名手みたいでかっこいいですね!

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    この全自動釘打機、釘を供給する仕組みが面白いです。振動と遠心力によって釘を同じ方向に整列させているのだとか。メカ好きにはたまらないギミックです。

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    そうこうしているうちに、およそ300本の釘打ちが完了! カップラーメンが出来上がるくらいの時間で、打ち終わっちゃうんですね!

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    風車も機械が取り付けてくれます。風車の釘は通常の釘と異なり、ねじりがないのだとか。

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    続いては役物・アタッカーの取り付け。ここからは手作業です! レーンからぶら下がったインパクトドライバーで、一つ一つビスを打ち込んでいきます。ストンッ! と打ち込んだときの感触が、これまた気持ちいい……!

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    裏面には玉の通過を感知して、賞球を払い出させるセンサーが配線されています。この裏カバーを取り付けるとセル盤の出来上がりです。

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    このあと筐体に制御の基板や賞球払い出し装置などを取り付けます。この時、配線がたわんでいると何かの拍子に引っかかってしまうことがあるので、配線をしぼって(ねじるようにして)すき間をなくしていくそうです。細やかな心づかいですね。

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    筐体をラインに乗せて横に滑らせつつ、表裏をひっくり返します。(ここがいかにも「工場」っぽい!)

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    下皿やガラス盤、木枠を次々に取り付けて、完成です! 今回は、あらかじめほとんどの部品が出来た状態で始まったのでスムーズに進みましたが、実際にはパーツを一つ一つ作る作業や、釘が正確に打ち込まれているかのチェックもあるわけですから、本当に工程の多いお仕事ですね……! 仮に、全パーツがバラバラの状態だとすると「全社員総出でも、おそらく一日5台くらいしか作れない」とのことです。

    普通機の試打タイム突入!

    ということで、台が完成したので試打タイムに突入です!
    今回は打つ前に普通機の醍醐味のひとつ、連動機能について、直接手で玉を入れながら解説していただきました。

    チャッカーに玉が入ると5ヶ所のアタッカーがいっせいに開きます。5つあるアタッカーのうち、上段2つはいつ入れてもOK。下段→中段→下段→中段→下段の順で入れると、上段2ヶ所と合わせて最大7連動となるわけですね。

    攻略のコツは、まずはブッコミ狙い。天打ちして散らそうとする人も多いそうですが、『CRAコスモアタック7』ならブッコミ狙いのほうが入りやすいそうです。アタッカーが開いて、下段より先に片方の中段に入ってしまった場合、その閉じた側から下段に入るようストロークを調整すると、連動数と出玉が増えて良いのだとか。

    打ち始めてすぐチャッカーに入ったものの、先に中段に入ってしまって連動ならず! 下から狙うのはなかなか難しいです(笑)。

    アタッカー開放中に次の玉がチャッカーに入ると、再び全てのアタッカーが解放されます。いわば、ラウンド中に次のラウンドが始まってしまうようなもの。「チャッカーには次々入ってほしいけど、今入るのはもったいない」といったスリルも味わえます。

    『CRAコスモアタック7』・『CRAコスモパニック10』・『CRAコスモアタック7A04』の歴代3機種を試打させていただきましたが、3機種とも打ち始めてすぐにチャンスがやって来て、あっという間にアタッカーが開きました。現行のパチンコ機の中では格段に低投資・短時間で遊べる機種ですね。また、狙ったところに打つ、玉の動きを楽しむというアナログ感も、セブン機とは違う魅力があると感じました。

    試打が終わったところで、続いては愛喜の代表取締役である小林さんへのインタビューになります。なぜこの時代に普通機の開発をはじめたのでしょうか?
    今、愛喜の歴史が紐解かれる……!?

    普通機の魅力とは!?「愛喜」代表取締役へのインタビュー

    ――愛喜はP-CUBEという普通機メーカーから設備一式を引き取って、普通機の開発を始めたとのことですが、やろうと決めたきっかけは何ですか?

    4号機から5号機に移行する時、原点に戻ろうということで、パチスロは各メーカーからAタイプが出ましたが、パチンコは一体どこに戻ればいいのかわからない状態になっていました。液晶がどんどん大きくなり、筐体は重くなって、ゲーム性も複雑になり、暇つぶしにちょっと座って遊べる台がなくなっていたんです。そんな中、普通機というものを世に問うてみようということで、会社を始めることにしました。

    ――今ではパチンコの原点というと、王道スペックの「海物語」を思い浮かべる人もおりますが……。

    海も昔は「横回転なんてあり得ない」と言われていたんですよ(笑)。確かに、「海物語」はどこのホールでもなくてはならない機種だと思いますが、パチンコの本当の原点は正村ゲージだと思うんです。正村竹一さんが特許を取らずに残してくれた歴史的な正村ゲージを残したいという気持ちもあって、普通機をつくりはじめました。

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    ――では、普通機の魅力はどんなところですか?

    決まったお金・決まった時間で、自らコントロールして遊べるというのが普通機のいいところです。パチンコ依存症の問題がクローズアップされている今だからこそ、自分でコントロールできる普通機は存在価値があると思います。

    あと、機械や確率のせいにしなくていいというのもありますね。仕組みが複雑だと、ついつい不正を疑いたくなるのが人情ですけど、普通機は見たままですから。

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    ――ちなみに会社を始めた当時、開発のノウハウはあったんですか?

    まったくのゼロでした。講師の方を招いて、釘の打ち方から部品の組み立て方まで、全部ゼロからみんなで勉強したんです。

    最初に発売した『CRAコスモアタック7』は引き継いだ時に既にあった機種の刷り直しで、次の『CRAコスモパニック』が「どう作ったら楽しく玉が動くか」を考えながら作った初のオリジナル機種でした。

    ただ、ちょうどその頃MAX機の一斉撤去があって、販売は苦労しました。MAX機の後釜として入れるような機種ではないですからね。その後、「コスモアタック」を改良してリリースした『CRAコスモアタック7A04』は、有り難いことにご好評をいただきました。

    ――『CRAコスモアタック7A04』は、最初の『CRAコスモアタック7』からどんなところを変えたんですか?

    『CRAコスモアタック7』を導入してくれたホール様にリサーチして、玉がセンターステージに集まりやすいようにゲージを改良しました。アタッカーにもスピーディーに入りやすくなっています。この工夫が評価されて、増台してくれるホール様も多数ありました。

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    ――今年の2月に法改正がありましたが、新規則機を出す予定はあるんですか?

    来年(2019年)、新台を出します。もともと普通機は規制の影響を受けるスペックではないのですが、試しに『CRAコスモアタック7A04』を新規則機の検定に出したところ、問題なく通りました。

    価格の安い普通機をずっと作りたいという根強い気持ちはあるんですが、いかんせん廃盤になってしまっている部材もあり、将来的には何らかの形で新しいスペックを開発することになるかもしれません。

    ――それでも普通機へのこだわりは強いんですね。

    正直、今のパチンコユーザーにはあまり受けないかもしれません。でも、普通機は何も勉強しなくても打てる台です。しばらくパチンコから離れていた人とか、友達に連れてこられた初心者の方とか、そういう人が安心して遊べる台だと思います。

    ――安心して遊べるという強みはありますが、出玉のメリハリはどうなんでしょうか?

    基本的には穏やかですが、『CRAコスモアタック7A04』の実射データによると、一度マイナス1500近くまで落ち込んだ後、プラスマイナス0の近くまで戻しています。好調なら一気に1000発以上立て続けに出ることもあるわけです。

    ――確かに、先ほどの試打でも、連動や入賞が続いて出っ放しになることがありました。普通機の出玉性能も侮れませんね。では、「コスモアタック」や「コスモパニック」を導入したホール様からはどんな反響がありましたか?

    安く買えて長く使えるということでご好評をいただいています。「稼働が飛躍的にアップした」とか、「アウトが推定7万発に届く台は初めて見た」といった声が寄せられました。7万発というと、ほぼ終日打ち続けた数字です。セブン機と違って液晶演出がないので、打ち出しをストップされてしまうことがないんですね。

    お客様は、この台で持ち球を作って他の台に移動するとか、他の台で負けた時、最後にいいイメージを作って帰るために打つ、といった遊び方をされているようです。

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    ――話は変わりますが……愛喜では各ホール専用のオリジナル盤面を多数製作されていますが、おいくらで作れるんですか?

    遊技機として作る場合は、12万円+本体代です。

    ――それでも今の平均的なパチンコ台に比べればずいぶん安いですね。もしかして、個人でも注文できるんでしょうか?

    可能です。先ほどの価格には書類作成料も含まれていて、「営業に供するもの」でなければ届け出が不要なのでもっと安く作れます。

    ――それなら、観光地のゲームコーナーとか老人ホーム、カラオケのロビーなどに置いてもいいかもしれませんね。最後に、今後の目標を教えてください。

    愛喜の認知度を上げて、日本中のパチンコホール、1店に1台ずつ置いていただくことです。ゆくゆくはコーナー化を目指したいですが、まずは1店に1台入れていただければ十分です。

    ――本日はありがとうございました!

     

    今回の取材では普通機にかける熱い思いと、1台のパチンコがどれほど手間暇かけて作られているかを知ることができました。ひげ紳士さんがこちらの工場見学を推していた理由がよくわかった気がします。最近のパチンコはどうしても液晶演出が中心になっていて、もちろんあの迫力も魅力的です。でも、正村ゲージという偉大な発明を堪能でき、短時間・低投資で遊べる普通機は、液晶全盛の今だからこそ、生き残ってほしい台だと感じました。

    P-Summa編集部

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