【取材】激熱ハズレは減っていく!? 遊技機液晶ソフト会社で開発秘話を聞いてみた

2019/05/28

特集

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    近年のパチンコ・パチスロの液晶演出って本当に凄いですよね! ド派手な予告、スリリングなリーチから大当たりを射止めた瞬間は最高に気持ちいいものです。映像自体も進化していて、光や炎のエフェクト一つとっても、一昔前とは比べ物にならない豪華さ。その分、激熱ハズシをくらった時のショックもなかなかのものなんですが……。
    ここで、いくつかの疑問。年々進化を続ける液晶演出は、一体どんな風に作られているのでしょうか? 演出のトレンドとは? そして、映像が派手になればなるほど、激熱ハズレは増えそうだけど、そこんところどうなの?

    これらの疑問を解決すべく、P-Summa編集部は遊技機液晶ソフトの企画・開発を手掛けている株式会社ディレクションシーズに取材を申し込んでみました!
    同社アートディレクターの中西さんにお話を伺います!

    遊技機液晶ソフトの企画・開発とは?

    ――本日はよろしくお願いします。早速ですが、遊技機液晶ソフトの企画・開発とはどのようなお仕事ですか?

    最初にメーカー様から遊技機の企画概要や演出の大まかな指示を頂き、こちらで演出の見せ方・構成などを練って絵コンテを提出し、すり合わせを行います。次に、個々の演出や一連の流れなどをまとめた「ビデオコンテ」を提出。コンテにOKが出たら、2D素材や3DCGアニメーションを作り、「コンポジット」という作業で各素材を組み合わせて、完成品として納品します。要するに映像演出に関わる全てです。

    ――映像演出って、遊技機メーカーが全部作っているわけではないんですね。ちなみに、絵コンテとはどのようなものですか?

    最初に作成する絵コンテは、このようなものです。

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    この絵コンテのカット1で言うと、「流線をまとった光線が画面手前からIN」「色:暖色 オレンジ系」「形:オーラ光線 有機的」「速度:INを速く 画面奥でタメる」とあります。これを映像で表現するために、各素材を組み合わせていくわけですね。

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    映像を作り込む前に、まずは簡易的な素材でテンポと尺を調整します。その後は、可能なかぎりエフェクトを盛って、より派手な映像を作っていきます。

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    ――絵コンテのとおり、オレンジ系のオーラ光線っぽくなりましたね!

    でも、これで完成ではありません。さらにメリハリが出るよう、盛ったものがこちらです。

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    ――ひと目で、アツくなりそう! ってのが分かります! アツいと言えば、雑誌や攻略サイトを見ると演出の「信頼度」が載っていますが、メーカーからの注文書にも信頼度が書かれているんですか?

    いえ、信頼度をパーセンテージで指示されることはほとんどないです。演出の強弱とか分岐、色の強さといった指針は提示されますが、最終的に演出バランスの振り分けを行うのはメーカー様なので。
    パチンコではとにかく「色」が重要です。メーカー様からのリテイクは色に関するものが多いですね。たとえば、良かれと思って赤にオレンジや紫を混ぜてみると、「赤に見えない」とNGが出てしまうんです。あとは、「金のきらめきが足りない」とか(笑)。

    ――金の表現にも機種によって差があるのは、そんな理由なんですね(笑)。ほかに映像を作るうえで、気を付けていることはありますか?

    役物演出時の映像ですね。機種ごとに形状や動くスピードも様々なので、役物をより目立たせるため、それに合わせたエフェクトを付けています。

    3DCGアニメーションの進化

    ――そもそも遊技機液晶ソフトの開発を始めたきっかけは何ですか?

    弊社は今年で創業15周年になりますが、もともとはゲーム制作会社にいた4人で設立しました。代表の釜が大学時代にパチンコを愛好していて、自分たちの好きなものを作る会社にしたいという思いから、遊技機の液晶ソフトを作ろうと決めました。当時、パチンコの液晶は画面も小さく演出クオリティーもあまり高くありませんでしたが、ゲームの映像は大変な勢いで進化していたので、近いうちにパチンコもゲームに追いつくだろうと予想していました。

    ――ゲーム会社出身だから映像開発のノウハウがあったんですね。

    はい。でも、遊技機メーカー様との繋がりができるまで大変でした。プロトタイプの映像を作って、1社ずつ電話をかけて営業していたんです。そんな中、名古屋のとあるメーカー様がプロトタイプの3DCGアニメーションに興味を持ってくれました。当時はまだ遊技機の3DCGアニメーションが珍しかったんですね。それで、トライアルから始まって実績を積み、だんだんと案件や社員が増えていって今に至ります。

    ――3DCGアニメーションを作る上での苦労はどんなことですか?

    アニメ版権の場合、原作のキャラクターを崩さないことです。正面から見れば似ていても横から見ると不自然になったりしますからね。弊社では立ち上げ当初から、あえて手描きやセルアニメのテイストのまま3DCG化する「セルシェーディング」という技術を活用しています。
    実写版権の場合はリアルさを出すことですね。実写素材の俳優さんを3DCGの背景に自然に立たせるのはなかなか大変です。
    ただ、一時期は3DCGのロングリーチが流行っていましたが、最近は少し減ってきましたね。

    ――その理由とは?

    やはり予算と時間がかかるからです。素材一つ作るのも、それを動かすのも、膨大な時間がかかるんです。昔は全てのパーツ、演出を3DCGにする風潮がありましたが、最近は使う場所を選ぶようになりました。

    ――ある意味メリハリがついた、と言えますね!

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    ただ、映像の中でも「数字」(図柄)と「保留」は最重要部分なので、今でもほぼ必ず3DCGで作っています。

    パチンコ・パチスロ演出へのこだわり

    ――では、演出を作る上でのこだわりは何ですか?

    ユーザー様は何気なく演出を眺めていると思いますが、我々は「視認性」に相当こだわっています。パチンコの演出はとにかくテンポが速いので、色の変化やキャラクターの動きがスッと目に入ってくるよう、細かい調整が必要なんです。どんなに迫力があっても、見づらい場合はリテイクを繰り返しますね。

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    あとは「間」とか「緩急」です。どんなに派手な映像も、ただ流すだけではダメで、適度な間が必要なんです。特にユーザー様にとって一番大事な「当落が決定するまでの間」は何度も調整しています。

    ――パチンコ演出と言えば、通常時と右打ち中で変わりますが、その点はどのように意識されていますか?

    右打ち中は通常時以上にスピード感を重視しています。最近は規制の影響で、出玉スピードが速くなりすぎないよう、演出に時間をかける傾向がありますけど、リーチがかかる時もできるだけ冗長にならないよう心がけています。例えば、タイトル演出なら一気に出すのでなく文字を一つずつ出すなど、常に「展開」を入れるといった具合ですね。

    ――パチンコとパチスロでは、演出の作り方にどんな違いがありますか?

    一番違うのは「尺」(時間)の使い方です。パチンコは一定の尺が使えるので、テンションの波や緩急を計算して盛り上げていきます。一方、パチスロは次ゲームの開始でスキップされてしまうことが多いので、とにかく早く結果を見せるということを意識しています。

    ――それらの作業の中で、どのようなやり甲斐を感じますか?

    スタッフによりますね。デザイナーは2D素材が3DCGアニメーションとして動いた時、コンポジッターは疑似連演出やステップアップ演出がカチッとハマった時……でしょうか。全スタッフ共通なのは、新台がお店に並んで稼働した時ですね。

    ――ちなみに、映像の世界ではパチンコの液晶が最先端と聞きましたが、本当ですか?

    派手さや熱量という意味では間違いなく最先端でしょうね。弊社ではゲームの映像も手掛けているんですが、パチンコで生まれたCG素材の作り方はゲームでも活用しています。

    ――それと、噂では企画のスタートから台の発売まで2年ほどかかると聞きましたが……。

    大体そのぐらいかかります。なので、2年後のトレンドを予想して演出を作るんですが、これがなかなか難しい。2年あれば映像技術も進化しますしね。

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    ――開発環境も常に進化を続けているんですね。

    ソフトやマシンは常に最新のものを揃えています。それと、開発環境へのこだわりとして、マニュアル化できそうな作業は逐一マニュアル化していますね。プロジェクトを進めつつマニュアルを作るのは結構大変なんですが、新入社員や他業界の方が入ってきた時、実務研修の説明に使用したり、作成のヒントやお手本になったりとすぐ戦力になってもらえるという大きなメリットがあります。弊社では新しい仲間を随時募集しておりますので、液晶ソフト開発に興味のある方は、お気軽にご連絡頂ければと思います。

    液晶演出の過去と未来

    ――最後に、液晶演出のトレンドの変遷について、教えてください。

    最初はシンプルなリーチだけだったのが、ロングリーチやキャラアクションが付き、スーパーリーチが登場して、疑似連が付いて……と、昔に比べて今のリーチ構成は本当に多種多様になりましたね。それと5年くらい前から、映像は平面から立体へと進化してきました。平面と立体の画像を見比べてみてください。

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    ――平面の画像も綺麗に見えますが、やはり立体のほうがずっとインパクトがありますね!

    こちらの画像も平面と立体の違いがよく分かると思います。

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    現在はメインのエフェクトに対して、奥と手前にパーツを配置して奥行きを出すのが主流です。熱い演出などでインパクトを出すには、遊技者に向けて飛ばすエフェクトが重要になります。逆にアツくない時は、平面のエフェクトを使うこともありますね。

    ――エフェクトの使い方もずいぶん工夫されているんですね! あと、遊技をしてて気になったのは、最近の「炎」って、カッコよすぎじゃないですか?

    炎も、技術の進化とともにどんどん派手になってきましたね。炎や雷、オーラなどのエフェクトは多くの機種で使用されるので、弊社にもかなりのノウハウがあります。

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    過去と現在の炎を比べると、より立体的になって、光量や形状も派手さを増してきました。ただ、演出が豪華で多彩になった結果、派手な演出が複合しないとなかなか当たらなかったり、熱さがわかりにくかったりという問題点もあります。

    ――激熱ハズレは我々ユーザーの間でもよく話題になりますが(笑)。開発側も気にされていたんですね。

    ここ2年ぐらいは、特にメーカー様から事前に確認頂くようになりました。とにかく派手でカッコいい映像を作ればOKという時代も確かにありましたが、最近は変わってきましたね。メーカー様から「この演出はそれほど強くないので熱量を落としてください」とリテイクを貰うこともあります。少なくとも弊社では、バランスを意識したものを作っているので、今後はとんでもない激熱ハズレは減っていくはずです。

    ――ちなみに、5月の型式試験申請から「演出表示器に使用するデータ用ロムの記憶容量」についての規制が撤廃されましたが、これによってどんなことが可能になりますか?

    画質は確実に向上しますね。今まではどんなに綺麗に作っても圧縮しないと入りませんでしたが、今後は容量が増えて、実制作物に近い出力が可能になるでしょう。大きな画像も使えるようになるので、今以上に綺麗で迫力ある映像をお見せできるようになると思います。

    ――では近い将来、パチンコの液晶演出はどうなっていくのでしょうか?

    これ以上どうやって盛り上げようか……というのは結構悩みどころです。綺麗で派手なのは今や当たり前になってきたので、新しい発想をどれだけ生み出せるかが重要ですね。メーカー様からも「今までと違った表現の炎はないですか?」とか聞かれたりするので、ネタ探しのため、いろいろな分野の映像を見て研究しています。

    ――今後どんな発想が出てくるか楽しみにしています! 本日はありがとうございました!!

     

    派手さや熱量では映像界を牽引するレベルのパチンコ液晶演出ですが、迫力一辺倒ではなく、視認性や緩急、バランスを考えて作っているということがよく分かりました。いつも漠然と眺めている画面も、開発者さんの工夫やこだわりを探してみると、また新鮮な気持ちで楽しめるかもしれませんね!

    P-Summa編集部

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