【取材】新台入替がスポーツに!?謎の競技「iスポーツ」の真相を探ってみた

2021/02/27

特集

  • ispo00
    今年1月、パチンコ業界に奇妙なニュースが流れました。
    「日本iスポーツ機構」なる団体が設立され、遊技機の取り付けを「iスポーツ」として競技化するというのです。設置業者さん同士による単発のイベントなら、まだ納得できるのですが、どうやら一般層まで広く普及させていく方針とのこと。一体なぜ、遊技機の取り付けを本格的にスポーツ化させようとしているのでしょうか? それと、ネット上では「釘調整の競技?」みたいなツッコミも入っていましたが、そのあたりの事情は……?
    謎だらけのiスポーツに興味を持ったP-Summa編集部員。日本iスポーツ機構に取材を申し込んだところ、副代表理事の小澤さんとお話できることに! ということで、オンラインでインタビューをしました!

    「iスポーツ」の「i」に込められた意味


    ――本日はよろしくお願いします。早速ですが、「iスポーツ」はどんな経緯で生まれたんですか?

    パチンコやパチスロを打っていると、座っている時間が長いので、運動不足になりがちですよね。

    ――確かに、私もいい歳なので……半日も打っていると体がガタガタになります。

    私もそうです(笑)。なので、スポーツの要素を取り入れた健康的なイベントをパチンコ業界でもやれないかと、以前から模索していました。その際に目を付けたのが入替作業です。

    ――単なるイベントではなく、わざわざ「スポーツ」化した理由とは?

    設置の速さを競うだけのイベントだと真面目過ぎて楽しくありませんし、一回きりで終わってしまいます。いろんなエンタメ要素を加えて、賞金もつけて、オーディエンスが楽しめるようにと考えた結果、採点基準のあるスポーツにしよう! となったわけです。そして、そこまで本格的にやるなら一般社団法人を作ってしまおう……と。この構想を始めたのは2年以上前からになります。

    ――機構の役員さんを拝見すると、皆さん別々の会社に所属されていますが、どういった集まりなんですか?

    代表理事の大原は元パチンコホール経営者団体の事務局長で、私はホールコンサルタントです。パチンコ業界における、いわゆるサードパーティーの仕事仲間……というより飲み仲間かもしれませんね(笑)。仲の良いメンバーが集まって設立した感じです。

    ――iスポーツは「install」の頭文字をとって名付けられたとのことですが、他に名前の候補はありましたか?

    元々は「irekae」の「i」で、iスポーツだったんです。

    ――いれかえ! なんとも直球な……(笑)。

    ただ、話し合っていくうちに、「将来的にはパチンコ台の入れ替えだけにとどまらないかもしれない」……むしろ、「パチンコ業界だけにとどめたくない」という方向性になってきました。

    ――というと、パチンコ台に限らず、「何らかの取付け」をスポーツ化すると?

    そういうことです。歴史を紐解いてみると、「釘を打って何かを取り付ける」という技術は紀元前から存在します。「irekae」ですと、やはりパチンコ台だけのイメージが強くなってしまうので、何か良い表現はないかと辞書を引いて、「install」(取り付ける)に辿り着きました。「i」の文字が「人」っぽく見えて、人の笑顔と健康志向に合致するのと、「釘とげんのう(ハンマー)」にも見えるということで、気に入っています。

    ――「釘」と聞くとすぐ「釘調整」を思い浮かべてしまう人もいますが……。

    それは大変な誤解です(笑)。iスポーツは「台の取り付け」の競技であって、盤面の釘には一切触りません。

    「iスポーツ」のルールとは?

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    ――台の取り付けを採点するって、なかなか難しいと思うんですが、審査基準はどうなっているんですか?

    「スピード」「打付精度」「面精度」「傾斜精度」「印象点」の5項目を10段階、50点満点で審査します。何とかこの形に落ち着きましたが、項目を設定する際、理事たちの間ですごく揉めたんですよ。

    ――というと……?

    まず「タイムトライアル」の要素は外せませんが、雑では困ります。取り付けの完成度も審査したいわけですから。ではその基準をどうするか? 相当話し合いました。たとえば、ネカセを技術要素に加えると専門的になり過ぎて一般の方が理解しづらい。そこで、傾斜精度に関しては「下げ振り」という道具を使って、目視で「垂直」を目指してもらうことにしました。

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    あとは、指定の位置からズレることなく取り付けられるか、を採点する「打付精度」。シマとして見た時に面が飛び出したり引っ込んだりしていないかを採点する「面精度」です。

    ――最後の「印象点」というのは?

    パフォーマンスとしての美しさです。たとえばフィギュアスケートの場合、イナバウアーは技術点の対象にはなりませんが、iスポーツでは積極的に評価していきたいんです。げんのうを打ち下ろす角度とか、ダイナミックさとかですね。実際の審査の時に、審査員達でまた揉めるだろうという予感もしますが……(笑)。

    ――パチスロではなく、パチンコ遊技機の取付けを競技化した理由はなんですか?

    傾斜の要素がないというのが主な理由です。評価基準から「傾斜精度」が抜けると4つになってしまって、何となくバランスが悪いじゃないですか。ただ、もしパチスロメーカーさんから「スロットでやってほしい」と言われれば、将来的にはパチスロ機での大会を開く可能性もあります。

    ――大会と言えば、日本iスポーツ機構設立の発表と同時に、「GENNOUカップ」の開催も発表されていましたね。第1回で使う機種はもう決まっているんですか?

    豊丸産業さんのご賛同を得まして、『Pワイルドロデオ6750だぜぇ』をご提供いただきました。


    ――話題の機種! これはゲーム性的にも傾斜精度が大事ですね。ちなみに、GENNOUカップには実況や解説も付くんですか?

    もちろんです。実況はプロの方で、解説は我々、日本iスポーツ機構のメンバーが行います。

    ――普段見慣れない作業なだけに、実況解説がないと、どう見て楽しんだらいいのか、分かりにくいですものね。

    そうなんですよ。どんな技術が駆使されているかを伝えないといけませんから、責任重大です。あと、カメラのズームやアングルも大事だと思っています。引きの視点だけだと、ただ背中を見ているだけになりますからね。

    釘打ちへのこだわり

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    ――「げんのう」という呼び方、一般にはあまり馴染みがないと思いますが……。

    もちろん「ハンマー」とか「トンカチ」という候補もありました。でも、やはり古くからある文化を広めていきたいという気持ちもあるんです。げんのう(玄翁)という呼び名は、200年以上前からあったと言われています。

    ――プロの設置業者さんは今でもハンマー……もとい、げんのうを使われているんですか?

    いえ、今は電動ドリルを使う方がほとんどなんですよ。「だからこそ」という思いもあります。

    ――DIYでも電ドリが普及していますし、「釘を打つ」という文化は失われつつあるのかもしれませんね。

    ただの懐古主義ではなくて、釘にもちゃんとメリットがあります。電動ドリルで使うビスって釘より太いんですよ。それで、今は新台入替が頻繁にありますから、ビスを使うとシマの板が釘より早く痛んでしまうんです。

    ――なるほど……!

    シマを大事にする熟練の職人さんは、今でもげんのうと釘を使っていて、「いつからビスになっちゃったんだろうね」なんて話してます。もちろんビスで打ったほうが速いし楽なんですけどね。げんのうで釘を打つのは、電ドリでビスを打ち込むより、動きがあって見た目が楽しいし、競技者にとっては健康的でもあります。さらに、ブレないように打つためのテクニックも求められますから、スポーツ化するならやはり、げんのうですね。

    ――俄然面白そうな予感がしてきました! 大会の開催場所は都内の「P-SPACE」とありますが、これはどういった施設なんですか?

    そうでしょ、興味がわいてきたでしょ(笑)。シマ設備の星野工務店さんにご提供いただき、iスポーツ専用の「競技ジマ」を作っていただいたんです。遊技のためのシマではなくて、競技のために新たに設計したシマです。ここで「すでに設置されている台を1台取り外して、1台取り付ける」というのが競技の1セットになります。

    ――それを1人ずつ行うわけですか?

    いえ、2名同時に競っていただき、トーナメント方式で優勝者を決定します。1人より2人のほうが、特にタイムトライアルに関しては盛り上がりますからね。

    ――使用するげんのうは持ち込みですか? それとも指定?

    こちらで用意したものを使っていただきます。

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    ――結構長いんですね!

    そうですね。遠心力を使って強く打つ方もいれば細かく連打する方もいるので、どんな打ち方が見られるか楽しみです。初回はトラブルを避けるために統一しましたが、個人によって道具にこだわりがあるかもしれないので、今後はいろんなご意見を聞いた上で、範囲規定を作るかもしれません。

    ――服装の指定はありますか?

    特にありません。参加される方の多くは、作業着的なものを着られると思いますが……そう言えば、衣装で「印象点」が加点される可能性はありますね。日本iスポーツ機構としては「笑顔を大事にしたい」という方針なので、エンタメ性に関しては柔軟に考えていきたいです。

    ――「ワイルドロデオ」をスギちゃんの格好でワイルドに取り付けるというのは?

    加点される可能性はありますね(笑)。

    賞金総額20万円! 「GENNOUカップ」に参加するには?


    ――大会に参加するには「iスポーツ健康アドバイザー」の資格が必要とのことですが、現時点でどのぐらいの方が取得されていますか?

    発表から2週間で50名以上の方が受験されました。年齢層は20代から30代後半が中心で、中には50代の方もいらっしゃいます。

    ――一番多いのはプロの入替業者やホール関係者ですか?

    我々もそうなると思っていたんですが、意外にも一般の方が6割弱を占めていて、残りはパチンコ業界関係者さんが中心です。ライターさんなど多くの方がiスポーツのニュースを面白がって広めてくれたおかげでしょうね。

    ――とは言え、自宅に実機やシマ設備を持っている人はほぼ皆無だと思いますが、一般の方はどうやって練習すればいいのでしょうか?

    そう思って、トレーニングジムを作りました。


    ――すごい……! このジムに行く以外で、何か準備できることは?

    台を自力で上げ下げしないといけないので、足腰の筋肉が重要です。それと、げんのうを使う際は手首のスナップが重要になります。なので、筋トレやストレッチなどをしておくといいかもしれません。

    タッグ競技に世界進出!?「iスポーツ」今後の展望


    ――2月20日に開催を予定していた「iスポーツ体験会」は延期になってしまったんですね。

    はい、3月13日に延期になりました。新型コロナに関してはまだまだ油断できない状況で、GENNOUカップにも大勢のオーディエンスを招くわけにはいかないので、動画で中継したいと思っています。もちろん大観衆の前でやりたい気持ちもあるんですが、動画なら遠くの方にも見ていただけるので、悪いことばかりではないな、と。

    ――では、今後の展望についてお聞かせください。

    第1回は東京ですが、今後は全国に展開していきたいです。地方大会の優勝者が集って日本一を決めるみたいなことができたらいいですね。競技の形式としては、ホールさんからの問い合わせも来ているので、「ホール対決」も視野に入れています。あと、1人では持ち上げられないような巨大な機種が増えてきたので、「タッグ戦」も考えています。

    ――最近の筐体は本当にすごいですからね。iスポーツは「パチンコ台に限らない」というお話でしたが、具体的には、今後どんなものが対象になり得るんでしょうか?

    釘を使って設置するものなら何でも対象になり得ます。いっそ「鳥の巣箱を木に設置する」とかでもいいんですよ。げんのうと釘は世界中に存在しますから、ゆくゆくは海外でも大会を開きたいと思っています。可能性は無限大。たくさんの方が様々なアイディアを寄せてくれているので、柔軟に取り入れながら、継続的にやっていく構えです。

    ――まずは第1回大会の成功をお祈りしています。本日はありがとうございました!

     

    我々が予想していたより、本格的な準備が進められていたiスポーツ。伝統の職人技をエンタメにするって、なんか良いですよね! もしかすると、日本のパチンコを取っ掛かりに、今後は世界規模のスポーツへと成長していくのかもしれません。

    P-Summa編集部

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