【取材】業界初のキャッシュレス決済アプリ「PPPAY」テスト導入中止の真相とは?

2025/12/18

特集

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    こんにちは、P-Summa編集部員です。遊技中に手持ちの現金が尽きて困った経験はありませんか? 店内にATMがあればまだいいのですが、なければ外へ下ろしに行かないといけないですし、そもそもキャッシュカードを持参していない場合はどうすることもできません。以前から「現金以外も使えたらいいのに……」と思っていましたが、ついにパチンコ業界でもキャッシュレス決済が可能に!? クレジット決済アプリ「PPPAY」(ピーピーペイ)の登場です!

    ところが、開幕から暗雲……。2025年11月に大阪のホールで実施予定だったテスト導入は、急遽中止となってしまいました。ネット上では「警察からストップがかかった?」などと色々噂になっていましたが、真相はどうなのでしょうか? PPPAYを開発した株式会社PPP取締役の方にお話を伺います。

    「PPPAY」のテスト導入は中止ではなく延期!? 使えるのはいつから?


    ――本日はよろしくお願いします。早速ですが、PPPAY開発のお話の前に、テスト導入が中止された背景をお尋ねしてもよろしいでしょうか。

    まず前提として、警察から指導を受けた、あるいは業界団体から反対されたといった事実は一切ありません。
    背景としては、現在、公営競技分野において、依存症対策の観点からクレジット決済やオンライン投票の運用を見直す動きが進んでいることがあります。とくにクレジットカードの利用額に上限を設けるといった形で、制度面の整理が進められています。そうした流れを踏まえ、遊技業界において新たにクレジット決済を導入することについて、このタイミングが適切なのかを社内で慎重に検討しました。その結果、制度全体の方向性がある程度整理されるのを待ち、導入時期を改めて見直す判断をした、というのが経緯です。
    私たちは、「導入できるかどうか」だけで判断するのではなく、社会全体の流れや受け止め方も踏まえながら、無理のない形で進めていくことを大切にしています。今回の判断も、そうした考え方に基づくものです。

    ――なるほど、PPPAYの問題ではなく、時期の問題だったんですね。

    はい。PPPAY自体については、導入当初から利用者保護を前提に、利用上限や運用ルールを比較的厳格に設計しています。一方で、いまは公営競技分野を中心にクレジット決済・オンライン投票の在り方が整理されつつある局面ですので、その議論が一定程度まとまり、ルールとして明確になった段階で、改めてテスト導入を検討していきたいと考えています。

    ――中止になったわけではないと! いつ頃から再開できそうですか?

    現時点で具体的な時期を断定するのは難しいのですが、制度面の整理が進むスピード感を見る限り、そう遠い話ではないと見ています。目安としては、来年春頃を一つのターゲットにしつつ、関係者の動きやルールの整備状況を踏まえて、無理のない形で再開時期を判断していく方針です。

    パチンコ・パチスロ専用キャッシュレス決済アプリ「PPPAY」開発秘話


    ――改めてPPPAY誕生の経緯をお伺いします。そもそも、なぜ今まで遊技機のキャッシュレス決済ができなかったのでしょうか? たとえばJRAでは20年以上前から使えていますよね。

    大きな理由の一つは、クレジットカード決済における不正利用リスクへの対応です。クレジットカード会社にとっては、不正利用が発生した場合の補償や責任の所在を明確にできるかどうかが、非常に重要な判断材料になります。

    ――そうなんですね! では、パチンコ業界の場合は……?

    パチンコ業界の場合、その不正利用が発生した際の補償スキームや管理体制を業界全体としてどのように構築するか、という点が大きな課題でした。実際に10年ほど前から、複数のパチンコ関連企業様より「クレジット決済のライセンスを取得したい」というご相談をいただいていました。しかし当時は、セキュリティ面や運用面を含め、クレジット会社側が安心して提供できる環境が十分に整っていなかったため、結果としてキャッシュレス決済の導入には至らなかった、という経緯があります。

    ――10年前から水面下で動いているホールもあったと。

    はい。そうした背景を踏まえ、私たちは独自の認証技術である「RC-Auth」を採用しました。この仕組みは、認証と決済を適切に分離した構成にすることで、不正利用のリスクを抑えることを目的に設計されています。また、技術的な優位性だけでなく、決済や業界制度との整合性についても慎重に整理を行い、この仕組みを前提とした形でサービスを立ち上げる判断をしました。その結果として、PPPAYのリリースに至っています。

    ――続いて、PPPAYの使い方についてお聞かせください。
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    PPPAYは、利用開始時にアプリ上でクレジットカード情報と必要な本人情報をご登録いただく仕組みです。その際、1つのアプリにつき登録できるクレジットカードは1枚に限定しています。また、年齢確認については、免許証・マイナンバーカード・在留カードなど、公的な本人確認書類を用いた仕組みを採用しており、20歳未満の方はご利用いただけない設計としました。実際の利用時は、ホールのカウンターでアプリのQRコードを提示することで決済が行われ、決済完了後にICカードへ玉やメダルが貸し出される流れになります。利用手順をシンプルにしつつ、確認すべきポイントは確実に確認する構成としました。

    ――1日2万円・月8万円という限度額はどのように設定されましたか?

    依存症対策に考慮したうえで、限度額については「どこまで使えるようにするか」ではなく、「どこで止める設計にするか」という観点から検討しました。公営競技におけるキャッシュレス決済の運用や、過去にホール内で使われてきたデビット型の仕組みなど、既存の事例も参考にしつつ、PPPAYとしてはそれらよりも低い水準をあらかじめ設定する判断をしています。他の仕組みに単純に合わせるのではなく、遊技という特性を踏まえ、使う側にとっても、提供する側にとっても無理のない範囲に抑えることが重要だと考えました。その考え方を反映したのが、現在の限度額です。

    ――他と揃えるのではなく、低く設定したんですね。

    はい。限度額を低く設定するだけでなく、利用しているご本人が「今どのくらい使っているのか」を自然に把握できることも重要だと考えました。そのため、アプリ上では決済履歴を確認できるようにし、その日の利用額や上限までの残りを円グラフなどで直感的に分かる表示にしています。また、上限に近づくと視覚的に注意喚起が行われる仕組みも取り入れました。加えて、本人だけでなく、家族など周囲の方が関与できる余地を残すことも大切だと考え、家族申請による利用停止機能も実装しています。PPPAYでは、単に「止める仕組み」を用意するのではなく、使われ方そのものを穏やかにコントロールできる設計を意識しました。

    ――ちなみに、クレジットカードの現金化はどのように対策されているのでしょうか?

    その点についても、あらかじめ想定したうえで設計しています。PPPAYは、決済や利用履歴をホール側で確認・管理できる仕組みとしており、通常の遊技利用とは明らかに異なる動きが見られた場合には、ホールの判断で対応できる構成としました。たとえば玉やメダルを借りてから短時間で景品交換が行われるなど、現金化を疑わせる利用状況が確認された場合には、ホール側の判断により利用停止などの措置を取ることが可能です。決済を自動で制御するのではなく、現場での運用と組み合わせて管理できる点も、PPPAYの特徴の一つだと考えています。

    ユーザーとホールからの反響


    ――PPPAY発表時の反響はいかがでしたか?

    率直に言えば、さまざまなご意見をいただいています。とくにSNSなどでは「システム利用料5%が高いのではないか」「実際に使う人がいるのか」といった声があることも承知しています。一方で、新しい仕組みである以上、まずは率直な疑問や懸念が出てくるのは自然なことだとも受け止めています。私たちとしては、そうした声を前提にしながら、仕組みや考え方を丁寧に説明していく必要があると考えています。

    ――この5%というのは、ユーザーが負担するんですよね?

    はい。たとえば1万円分の玉やメダルを借りる場合、システム利用料5%を含めた1万500円を決済していただく形になります。

    ――正直、いちユーザーとして10kで0.5kは安くはないなと感じてしまいます……。

    そのように感じられる方がいらっしゃるのも自然なことだと思います。実際、他のキャッシュレスサービスを見ても、公営競技のオンライン投票では、1回あたり一定額の手数料が設定されているケースもあります。1回の投票で約100円、1000円なら10%、2000円なら5%という感じです。ATMで現金を引き出す場合は手数料が約200円、1万円なら2%、5000円なら4%かかっています。
    PPPAYについても、日常的に頻繁に使っていただくことを前提とした仕組みではありません。たとえば手持ちの現金がないときに「今日はここまでにしよう」と思いながらも、もう少しだけ遊びたい、という場面で選択肢として使われることを想定しています。そのため、いわゆるヘビーユーザーの方に積極的に使っていただくことを目的とした設計ではなく、利用頻度が比較的低い方や、使い方を自分でコントロールしたいと考えているライトユーザーの方に向けたサービスだと位置づけています。

    ――ホールからの反響はどうですか?

    現時点でも、すでに40~50社ほどのホール様からお問い合わせをいただいています。PPPAYは、カウンターにタブレットを設置するだけで導入できる仕組みのため、運用面のハードルが低い点に関心を持っていただいているケースが多いですね。また、「制度環境が整理されたタイミングで、速やかに導入を検討したい」といった声もいただきました。キャッシュレス決済については、日常的に現金を多く持ち歩かない方や、遊技の途中で現金管理を気にせずに済む選択肢として、一定のニーズがあるのではないかと見ています。PPPAYは、遊技を促進するための仕組みではなく、あくまで利用者とホール双方にとって無理のない形でキャッシュレスという選択肢を提供することを目的としました。その点をご理解いただいたうえで、関心を持っていただいていると感じています。

    「PPPAY」のサンド対応の可能性は? 今後の展望を聞いてみた

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    ――PPPAYは、どの程度の普及率を目指していますか?

    現在、日本におけるキャッシュレス決済の普及率が4~5割のため、PPPAYは約3~4割を目指しています。

    ――現時点ではカウンターでの決済を想定しているという話でしたが、サンドには対応していないんですか?

    実はキャッシュレス決済の仕組みができあがったのは3~4年前で、ずっとサンドメーカー様との連携を前提に検討を進めてきました。ただ、すぐに一体型の形を実現するのは難しいと判断し、まずはホール様の運用に無理がなく、現場で導入しやすい形として、独立した仕組みのPPPAYを先行リリースしています。何が安全で、何が使いやすいのか、ホール様やお客様の声を聴きながら分析し、キャッシュレス時代に見合ったサービスとして、一つ一つステップアップしていきたいと考えています。

    ――今後の進化が楽しみです! 本日はありがとうございました!

     

    導入直後はボロクソに叩かれていた新台が実は稼働好調……ということも往々にしてある世界。PPPAYも実際に導入されたら利用する方が結構いそうな気もします。将来的にはホールに現金を持たずに行くのが当たり前になるかもしれませんね。

    P-Summa編集部

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