夏以降、パチスロ機の保通協の適合数が激減している。
いわゆるAT/ART規制だ。
今週から全4回に渡り、パチスロ業界の最新裏事情を取りまとめ、スロットの5号機のこれからを検証していく。
第一回目は、「9月以降の大きな3つの自主規制」をテーマに現在スロットがおかれている状況を再確認する。
パチンコ・パチスロの遊技機は図のような過程を経て、新台デビューする。
遊技機メーカーはまず、保通協の型式試験に合格(=適合)しなければならずその後、各都道府県の公安委員会の検定試験を受ける。
検定試験では適合機種の技術仕様書などを提出、公安委員会が確認し、問題がなければ検定通過。晴れてメーカーは販売することが可能になる。
この流れの中で重要なのは、警察庁は保通協に試験を委託する際に、試験の行い方の指示を行うということだ。
つまり警察庁が試験内容を厳しくすれば、型式試験は適合しづらくなるのだ。
今年は2月に『ハーデス』、3月に『モンハン2』、そして6月の『蒼天』から遅れることおよそ3ヶ月、満を持して登場したのが『サラリーマン番長』。
だが昨年とは違い以降、話題機種の検定通過情報が少ない。それは一体どういうワケなのか?
2014年8月27日、警察庁から日本電動式遊技機工業協同組合(以下、日電協)に対して「型式試験方法」の変更を伝える通達があった。(※日電協は遊技機メーカーで作る組合の事)
そして、この通達によって業界各社で『内規(内部規制)』を変更する事態が起こったのだ。
特に、業界全体を激震が走ったのが下記の通達。
「適合試験で行われる試し打ちは押し順ナビに従わず、順押しだけで消化して下限出玉率(55%)を下回った機種に関しては適合させない」
これが2014年9月16日以降、保安通信協会(以下、保通協)へ持ち込まれるスロット機全てに適応されることになり、業界各社は開発中のスロット機の仕様を大幅に変更しなければならなくなった。
検査の際、このAT・ART時のナビを無視した「ナビ無視試打」(「お上打ち」と呼んでもいいかもしれない)が適応されるとどうなるのか?
関係者の話によれば 、「現行のAT機・ART機は、検定が通らなくなる」のだという。
簡単に言えば、「お上打ち」で、下限出玉率(55%)を下回った機種は型式試験に合格できないのだ。
この通達によって、内規・検定スケジュールや、今後の開発方針など、業界各社は見直さなければならなくなったため、今夏以降、スロット機の適合数が激減しているのだ。
『内規』で「お上打ち」をしてしまうと、まずベルが揃わず、出玉が減り、AT機のボーナス概念が覆されてしまう。
通達の「順押しのみで55%超え」と言うのは、順押しが一番ベースが低くなる押し順であるからだ。
「では順押しだけベル揃いの確率を上げれば良いではないか」
と、考えてしまうかもしれないが、実際の試打では中→右→左といった他の打ち方での試験も行う。
つまり、「6通りある押し順のうち、いずれか一つのみを続けた場合でも55%以上」になるよう設計しなければならないのだ。
これは、現行の高純増AT・ARTが開発できなくなったことを意味している。
「押し順ペナルティ」とは何か?
もし仮に透視能力を持つ超能力者なら、AT機は通常時でも押し順を完璧に当て続けることで、AT状態と同じメダルを獲得できるだろう。 だが、”順押し”をしない場合にはペナルティーとして、数ゲームの間ATの抽選をしないという特徴を持っている。
これが「押し順ペナルティ」とよばれるものである。
この「押し順ペナルティ」に対して9月19日、またもや衝撃の通達がなされる。
今年12月1日以降に型式申請されるAT・ART機は「新規ペナルティ方式」に改めるという。
つまり現状の「押し順ペナルティ」方式は型式試験に適合しなくなるのだ。
「押し順ペナルティ」規制の理由は、「現行押し順ペナルティは次にプレイする遊技客に影響を与える可能性がある」からなのだとか。
例えば「5ゲーム連続で順押ししないで、次の1ゲームを回して席を離れたとする、すると次の客は4ゲームの間AT・ARTの抽選を受けられない」、これを改めよというのだ。
つまりこれを反映していない12月以降の保通協の試験持ち込み分は全て、不適合となる。
そして、同時に行われた、もう一つの通達が現行AT機の絶滅を確定させる。
現在のスロットには「メイン基盤」と「サブ基盤」がある。そしてAT・ARTのナビ機能はサブ基盤で行っている。
しかし、9月19日の通達で来年の11月末までに、メイン基板だけで出玉性能をコントロールする機種へ変更していく事が発表された。
現在の主流機種は、メイン基盤とサブ基盤がセットで演出や出玉を管理。サブ基盤は液晶演出などを司っている。派手な液晶演出などは無くならないだろうが、出玉性能をメイン基板に完全に移行する際の問題点は、サブ基盤に比べ容量が少ないメイン基板に今までサブ基盤が行っていた機能をどれだけ盛り込めるのか、ということだろう。
メイン基板だけで動いているAT機などほとんど存在しないし、押し順ペナルティーも使えない。
これで現行のAT機は、来年11月でほぼ絶滅するといえる。
9月の適合数は3機種に対して、10月は13機種と増えている。
11月の適合数は発表されていないが、各メーカーは11月末に滑りこみで適合させ、検定も通過させようという動きが活発化していると推測できる。
今回の『内規』勧告で、業界は今後の展開を大幅に再検討しなければならなくなった。
今後はAT機よりも変更点が少ないART機に主力がおかれ、ボーナス+「ART」という仕様の機種がメインとなってくるかもしれない。
『内規』勧告のひとつひとつを紐解けば、高純増AT機の息の根を止めるための方針と受け取れるだろう。
そして来年の11月末にはホールから全て消え去るだろう。
しかし各通達以前に適合し検定通過しているにも関わらず、まだホールデビューしていない機種も多く存在する。次回以降、その謎に迫っていきたい。